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広瀬アリス「失敗している時、生きていると感じる」 8年ぶり主演映画で変わった死生観

2026.10.01
広瀬アリス「失敗している時、生きていると感じる」 8年ぶり主演映画で変わった死生観

天真爛漫で、明るく晴れやかな笑顔が魅力的な女優の広瀬アリスさん(31)。約8年ぶりに単独主演する映画「沖晴くんの涙を殺して」(監督:矢崎仁司、10月2日全国公開)では、余命1年を宣告された女性教師を演じています。「死生観が変わった」という作品について聞いた。(西村 綾乃)

撮影:光山 貴大

――最新主演作では、末期の乳がんで余命1年と宣告された音楽教師・踊場京香を演じました。どのように役作りをしていかれましたか。

「監督から『可愛そうな子には見せたくないから、悲しい表情をしないで』などと聞いていたので、セリフの間合いなどに気をつけて、なるべく肩の力を抜いてお芝居をしていました。あとは病気が進行していくので、少し痩せようと体重を減らしました」

――減量はどのくらいされたのでしょうか。

「トータルで4キロぐらいです。撮影は1カ月間くらいだったので、クランクインする直前から少しずつ減らしていきました」

――死を宣告された直後は、光を失った眼をしていました。でも、治療をしないことを選び、実家がある広島に帰り暮らす中では、さまざまな出会いを通して、再生していく姿が印象的でした。

「撮影に入る前は、死についてドラマチックに考えていたところがあったのですが、人間は生まれたからには、いつか死を迎えますよね。死を迎えた人の人生はそこで終わりだけど、周りの人の人生は次の日も続いていきます。変わらない1日がやって来るんです。死は意外とあっけないもので、生と死って意外ととても近いものなんだっていう思いが、撮影をしていくたびに強くなっていきました。一方で劇中は、悲壮感あるセリフが出てこないので、私自身の死生観がどんどん変化していきました。死ぬってどういうことなのか、頭では納得する部分があっても、演技としてそのギャップを埋められない、埋めきれていない自分がいて、そこにすごく苦しみました。撮影中は、『今、悲劇のヒロインみたいだったから、もう1回』と監督に止められることも多かったです」

――京香の様子を見て、当たり前のことですが、人間は死ぬ瞬間まで生きているのだと感じました。

「そうですね。私自身も、余命が残り数カ月だと宣告されても、その数カ月は生きてなきゃいけない。死ぬまでどう生きるかという、マインドに完全に切り替わりました」

――広瀬さんが、京香だったら、最期はどんな風に生きたいですか。

「私はもうこの作品と出合ってしまったので、死ぬほど楽しく生きると思います。やりたいことは全部やるし、食べたいものは全部食べる。太ろうがなんだろうが、死ぬからいいんだぜって」

――何をやりたいですか。

「まずは1週間ぐらいワンちゃんを連れて…。いや、1週間どころじゃないですね。犬たちを連れて日本中を旅します。フェリーもあるので、ガンガンいろんなところに行って、みんなで遊び疲れて寝たいです」

――生きていると実感する時はどのような瞬間ですか。

「せっかく早く寝たのに、5時間ぐらいで目が覚めてもがいてる時です。今朝もそうでした。今日は、気づいたら2度寝してしまいました。今日みたいに、失敗している時に、『私も人間だな』、『生きてる』って感じがします。多分すごい変だと思うんですけど、何か困難がないと生きている感じがしないんです。自分に苦しいタスクを持ってきたり、苦しい選択をしてしまいがち。きついことすぐしようとするんです、本当は嫌なのに」

――本当は嫌なのに…。

「映画やドラマの撮影も、すごく大変だけど年に2、3回ずつやっているんです。でもそこでしか得られない達成感や充実がある。苦しい。つらい。眠いと言っていても、終わったら、みんなで『イエーイ!』ってやっている。その瞬間のために3、4カ月頑張る。今回の映画は昨年撮影したのですが、信じられないぐらい暑かったんです。だから、『もう2度と夏に仕事はしたくない!』って思ったけれど、今年の夏も仕事しています。今日は室内だからいいですけど、多分数年後にまた夏に撮影をする作品をやっているんじゃないかなって。マイナスな感情を持つこと、私はそれをネタとして〝暗黒期〟と呼んでいるんですけど、しんどくて何をしてもネガティブな感情になる。そういう時間も大事だと思っています。幸せだなとか、プラスの楽しい感情だけで生きられたら、どれだけ楽なんだろうとも思いますけど。この作品に出合って、ネガティブな感情になる時って、例えるとしたら高くジャンプをする前に、膝を曲げている瞬間だって学んだんです。高く上がるためには、絶対1回下がりますよね。その下がる時期なんだ、なるほどと思ったんです。下がったら、あとは上がるだけ、ネガティブな感情も、その瞬間は苦しいけれど踏ん張る力がつくかなって思います。そういうことを少しずつ、自分の中で整理できるようになりました」

――撮影は広島・尾道市で行われましたね。美しい自然が印象的でした。

「海が見える学校の屋上は、空もとても綺麗でこれはいい絵になるなと確信しました。京香が交流する喜び以外の感情を失った男子高校生・志津川沖晴の家の庭からの景色も本当に綺麗でした。庭から見た朝日も美しかった。日が昇る時間に合わせて、深夜1時頃に起きて準備をして現場に行きましたが、頑張った分、素敵な絵になりました。広島じゃなかったら撮れない絵がめちゃくちゃありました。海や山、広い空。その中で遊んでいる地元の子どもたちもいて、あの環境じゃなかったら、私はもっとお芝居に力が入っていたと思います。豊かな自然の中だったからこそ、フラットな京香でいられたと思います」

撮影:光山 貴大
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