羽田美智子 「女優」と「店主」二足のわらじ「日本の良さを残したい」オンラインショップ「羽田甚商店」込めた思いとは 身近な人、これから出会う人の…
2025.05.23
女優の羽田美智子さん(56)は誰もがホッとできる笑顔の持ち主。出演中のテレビ朝日「特捜9 final season」(水曜後9・00)でもチームを温かくまとめています。そんな羽田さんにはオンラインショップの店主という横顔も。二足のわらじで活動しようと決意した舞台裏には、身近な人、これから出会う人の笑顔への思いがありました。(聞き手・井上 侑香)

――オンラインショップ「羽田甚商店」を始めたきっかけを教えてください。
「“羽田甚”は、もともと宮大工だった高祖父・羽田甚蔵からとった実家の屋号です。理容器具店や文房具店など、さまざま形を変え、私の父がたばこ店を営み、5代目でした。ただ、2015年、父が高齢になり、5代目を降りるという時にNHK“ファミリーヒストリー”の密着取材があって、実家の映像を見ていたら、カメラの前で両親がご先祖様に詫びていたんです。『私たちの代で5代目・羽田甚を絶やしてしまって申し訳ない。でも、子どもたちはみんなそれぞれの道についているからお許しください』って手を合わせていたんです。その姿を見て、ああ、屋号を潰すってこういうことだったんだって、ハッとしました。終わらせることは簡単だけど、続けていったら、もしかしたらこの先も誰か継承してくれる人がいたら10年も20年ももっと続くのかなと思って。バトンつなぎのためにも私がやらなくちゃっていう、使命感のようなものが出てきました」
――ご両親の思いを受け止められたのですね。伝統、家というものを考えさせられます。そして2019年に羽田甚商店をスタート。新たな一歩を踏み出すのにちょうどいいタイミングだったようですね。
「そうですね。20代から30代にかけては、お仕事で1カ月の半分は京都に行くような生活でした。それで、京都にお店を出したいなと思って物件を探したことがあったんです。ただ、役者業も忙しくて、京都に通ってお店をやることは難しいだろうなと思い、一度は諦めた夢でした。それでも40代になって残りの人生を考えた時に、今やらなかったらきっと後悔すると思ったのがきっかけで、思い切ってやろうと決意したのが40代。オープンは50歳になりましたが…」
――オープンして6年が経ち、いかがでしょうか。
「役者業との兼ね合いで時間の制限もあって、思った通りにはできていませんが、でも、始められてよかったです。もっと簡単にできるかなと思っていたら、意外にいろいろなことに戸惑ってしまって、配送料の問題とか、要望に応えられないこともたくさんあったりとか、限りなくギリギリの線でやっています。もうかっても支出が大きいというのは商売の基本ですが…。でも、日本の良さを残したい、日本の職人さんを大事にしたいという思いは、少し形にできたかなと思っています」
――職人さん、日本の未来への思いが伝わってきます。そんな羽田さんが最近見つけたおいしいものや名産品にはどういうものがありますか?
「北海道の特産果実・ハスカップですね。ポリフェノールの一種で眼精疲労の予防やコラーゲンの生成を促進する作用があるというアントシアニンが豊富に含まれていて、女性の美容に効果があるといわれています。ハスカップを作っている友人から毎年ハスカップをいただくんです。でも、生産が大変で辞めてしまう農家さんが多くて、だんだん穫れなくなってきているという現実もあるんです。応援したくて羽田甚商店ではハスカップのフルーツビネガーを販売しています」
――一つ一つの商品へ思い入れがあると分かります。羽田甚商店の店主として今後もやっていきたいことはどんなことでしょうか?
「そうですね。一つ一つ商品にストーリーがあります。そういう商品を作って下さる日本の職人さんをもっと大事にしたいんです。さまざまな土地に仕事で行く機会も多くて、正直に物作りをしている人たちが日本にはこんなにもいるんだということをあらためて感じます。だからこそ、企業努力のアピールの部分を私ができる範囲で担わせてもらって、消費者につなげることができたら、もっと消費者と生産者の間が縮まるかなという思いがあります。いい生産者を残すためには、買う側も投資する、応援することがすごく大事だと思っていて、それにつながる活動をしていきたいです」

都内で行われたイベントでのショット。「羽田甚商店」のブースでお客さんと笑顔で寄り添う羽田美智子さん(撮影・西尾 大助)