寺島しのぶ 長男子育てで母・富司純子との関係に変化「当時の母の気持ちが分かった」 母娘は「特別な関係性」
2025.05.14
女優の寺島しのぶさん(52)には近年ある変化があったといいます。それは母で女優の富司純子さん(79)との関係です。幼少期は弟で歌舞伎俳優の八代目尾上菊五郎さん(47)の稽古に富司さんが付きっきりであることに寂しさや嫉妬を感じていたといいますが、長男で歌舞伎俳優の初代尾上眞秀さん(12)の子育ての中で気付いたことがあるそうです。11日に閉幕した舞台「リンス・リピート-そして、再び繰り返す-」でも母娘の複雑な感情を見事に表現して絶賛の声が上がっていました。そんな寺島さんに富司さんへの思いを聞いてみました。(望月 清香)
――幼少期はどのような母と娘の関係だったのでしょうか。
「子供のころはすごく反抗していました。母は弟の稽古に付きっきりでした。なんで弟にだけそんなに時間を費やすのだろうと思っていました。私は1人でテレビを見てる時間が多かった。寂しかったですね。部活に熱中して、なるべくクタクタになって家に帰りました。家は寝るだけの場所でした。友達の家に行くことも多かったです」
――そんな母娘の関係に変化が訪れたきっかけは何ですか。
「眞秀が歌舞伎をやるようになってから、当時の母の気持ちが分かりました。歌舞伎役者のお稽古はやらなきゃいけないことがたくさんあるんです。私が今、眞秀の稽古で忙しく奔走しているので、当時の母の忙しさは想像できます。母はきっと弟と同じように私に愛情をかけていてくれたけど、物理的に私に時間を費やせなかったんだなって今になって分かるようになりました。母は私にも弟と同じように愛を注いでくれていたのだと今は思えます」
――ご自身が同じ立場になったことで富司さんの気持ちが分かったのですね。
「母は大きなプレッシャーと戦っていたのだと今になって思います。男の子が生まれた以上は立派な歌舞伎役者に育て上げないといけない。周りからの期待に応えるため一心不乱だったような気がします。その中でも私に愛情をかけてくれていたことに本当に感謝ですね」
――寺島さんにとって富司さんはどんなお母さんですか。
「母は強い人です。なんでも我慢しなさいと言う人で、病気になっても、“病気に打ち勝つのよ、気持ちの問題よ”みたいな事を言われます。そういうところが舞台『リンス・リピート』で私が演じた役に似ていると感じています」
――「リンス・リピート」でも母と娘のすれ違いを演じました。改めて母と娘はどのような関係だと思いますか。
「女同士だからこそ言える特別な関係性があると思います。娘が自分の分身のように思えてしまうんでしょうね。娘に対しては、愛あるゆえの残酷な言葉を発してしまうこともある気がするんです。私には息子が1人いて、娘はいないのですが、息子と母親の関係はまた別だと思うんです」
――富司さんの言葉で支えになっている言葉はありますか。
「母は存在そのものが支えです。言葉というのはパッとは浮かんでこないですね。ただ、私が眞秀を産む時に、分娩室にいきなり入ってきて“叫んじゃダメよ!”って言われました。“絶対叫んじゃダメよ、歯を食いしばって静かに産みなさい。叫ぶと恥ずかしいわよ”とも言われましたが、それおかしいでしょ?とその時思いました。母は我慢と根性の人なんです。だから私の名前も“しのぶ”なんです」
――お母さんが突然、分娩室に入ってきたら驚きますね。
「入ってくるのは赤ちゃんが生まれてからでいいんじゃない?って思いました。すごい勢いでしたね」
――寺島さんは実際叫ばずに出産したんですか。
「私、結構痛みに強いんですよ。だから叫ばなかったです」
――女優の先輩としてアドバイスをもらうことはありますか。
「同じ女優でも母と私のたどってきた道が違うので、それはなかったと思います。それでも、私は母の仕事を素敵だなと思っているし、母は私の仕事を認めてくれている。仕事に関しては別に何にも言わないですね」
――今の寺島さんにとって富司さんはどんな存在ですか。
「やはり大きくて、いまだに絶対的な存在です。眞秀が歌舞伎の世界で生きていくために、母親が心掛けていなきゃといけないことを私が恥をかかないようにいろいろ教えてくれます。たくさん助けられているし、もらってばかりのような気がします」
