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「私、できない」口に出すのは決して悪いことじゃない 知英が語る「素直な自分を見せる」ことの大切さ

2025.11.12
「私、できない」口に出すのは決して悪いことじゃない 知英が語る「素直な自分を見せる」ことの大切さ

日本でも着実にキャリアを積み重ねている韓国ガールズグループ「KARA」で女優の知英さん(31)。イベントやバラエティー番組で見せる明るいキャラクターがファンに愛されています。デビューから16年。実は心身のバランスに悩んだ過去もあったそうです。多忙な日々を乗り越えたメンタルケアについて聞いてみました。(井利 萌弥)

撮影・五島 佑一郞

――K-POP界のスターとして、第一線を走ってきた知英さんですが、ご自身の“心の声”や“体の声”と向き合うことはありましたか?

「やっぱり人前に立つ仕事だから、不安になったり、怖くなったりする時があって、そういうときに、心の中で“自信がない“とか、後ろ向きな言葉が出てきてしまいます。でも、今より若かった20代前半までは、そういう声を無視していたんですよ。“大丈夫、行ける。私は強い”って。そして体を張っていたら、無理をしてる自分がいたんですね。それに気付きました。その時はそれで良かったけれど、今も同じようにできるかというとどうでしょうね…。だから、最近の私はそういう声もちゃんと大事にしているんです。“あ、不安なんだな”って感じたら、“不安だよ”って、言える力を身につけたっていうか。“私、不安です”“私できない、どうしよう”っていう素直な自分を見せるっていうか。前はそれが嫌だったんです。弱気な感じや、できない自分に映るでしょうから。でも今は自分の中でそういう声が出てきたら大事にしています」

――ご自身の気持ちを素直に受け入れるようになったんですね。

「本当は人間って誰でも愛されたいじゃないですか?それがたとえ、友達でも恋人でも家族でも…。でも、なんとなく不安だから、その気持ちを隠したり、“いや、私なんて愛されないかも”って思っちゃうんですけど“私、愛されたいんだな”って、“愛されたいよ”って、それをちゃんと自分で認めることがすごく大事なんじゃないかなって思うようになりました。それを心の中で自覚して、人前に立つと、怖いものがないというか。最近は“私は私のままで愛されたい”と思うようになりました」

撮影・五島 佑一郞

――自分の素直な声を認めることで、何か変化を感じることはありましたか。

「自分で前と全然違うというのが分かります。以前は一つの仕事が全部終わった後で“いい仕事をした”って言われても、“なんかおかしい、そうじゃない気がする“って、モヤモヤしていたんですけど、今は“私ができることを全部やった。もうやり切った“とか、“人前に立って今日はちゃんと頑張ったよ”って、達成感を感じるんです。瞬間瞬間で、“愛されたい”“頑張ろう”って自分の心の声も大事にしながら時間を過ごしたら、なんかすっきりして終わるというか、家に帰っても、悔いがないというか、“ああ、頑張った”と思える。本当に愛されたのか、それまでは分からないですけど、最近は“今日はそういう気持ちで、皆さんの前で頑張った。楽しかった”みたいな考えに変わりました。正直言うと、昔は “なんか今日嫌だった”“疲れた”みたいな、そういう気持ちがあった時もあったんですけど、自分に素直になってからは、いろいろ楽しくなってきて。年齢もあると思うんですけどね。過去には “何でもいいや”って投げやりになる時もあったんですけど、最近は今の自分の気持ちも大事にしているっていうことですかね」

――考え方に変化が訪れた知英さん。今後はどのように年齢を重ねていきたいですか。

「楽しく生きていきたいです。あとは、自分に素直に、自分の心の声をちゃんと聞きながら自分らしくやっていきたいと思います!」

撮影・五島 佑一郞

スタイリスト:Chaeran Kang

衣装協力:ニット=カトリーントーキョー、パンツ=マリメッコ、シューズ=ヘンリ エン ヴァーゴ、ピアス=アプロ、リング=エネイ

<編集後記>

世界的なブームとなっているK-POP。今やNHK「紅白歌合戦」には、毎年のように韓流アイドルが出場しているが、知英は、他でもないその第一人者である。紅白にも、韓国のガールズグループで初めて出場したのはKARA(少女時代と同時に初出場)。アイドル、歌手、女優と、幅広く、そしてグローバルに活躍し、韓流ブームを牽引した。

しかし、そんなスターであるという事実を忘れてしまうほど、自然体で、飾らない性格だった。知英は「こういう結果を残した」とか「実はあんなに頑張っていた」とか、自ら語ろうとはしなかった。これまでの経歴を鼻にかけるでもなく、当たり前のように日本語で会話する。知らない言葉があれば、素直に「分からない」と答え、決して見栄を張らなかった。

インタビューをしていく内に、それが知英のストイックさからくるものだと分かった。どんなに人から褒められようと、自分の中では納得できないことが多々あるという。きっと知英は自分をスターだとは思っていない。努力を一切見せないだけで、さまざまな苦難と戦っている。目の前にいるフランクな「知英」の裏には、常に試練と立ち向かう一人の「カン・ジヨン」がいた。(井利 萌弥)

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